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組成の表示方法が変更 [07 販売・小売]

「家庭用品品質表示法」がH29年4月1日より改正されました。このため、組成の表示方法が変更されます。今回はこの問題を考えます。ただ、消費者庁に確認したわけでなないので、私の“解釈”です。


 1)竹繊維


竹繊維には、①爆砕という方法で竹の繊維を取り出し、それを紡績した糸と②竹を原料としてレーヨンを作るものがあります。 


①爆砕したもの(爆砕竹):【植物繊維(竹) ●%】

②溶解したもの(レーヨン):【レーヨン   ●%】


 


レーヨンの原料は木材パルプが普通ですが、竹を原料に使う理由は、竹は生育が早く、環境負荷が少ないためとされています。


今回の改正では、「植物繊維」と「動物繊維」という分け方になっています。JISによる「動物繊維」の定義を見ると、①蚕の仲間、②バイサス(見たことがない…)、③獣毛となっています。素材判別する側からいうと、「植物繊維」と「動物繊維」ではなく、「セルロース系」と「タンパク質系」の方が良かったのではないかと思います。すべての動植物を同定することは極めて難しいものです。


例えば、「植物繊維」については、燃やした時の燃え方、匂いからセルロース系と判断し、繊維の直径が不揃いなどの特徴から天然繊維と判断。比較写真と比較して、綿、麻でなければ、IRでセルロースの確証を得た後に、種類は不明であるものの「セルロース系」と判断することができます。


実際に綿だとわかっていても、標準写真と比較しても、綿と異なって見える繊維も観察されます。別の植物繊維を5%程度綿に入れられると混紡なのか綿100%なのかの判断はつかないと思います。

また、綿はシルケット加工を行うと形状が異なってしまいますが、シルケット綿を知っており、図、写真などが出回っているので、判断することができます。シルケット加工ありと言っても、その加工の程度で綿の形状がそのまま残っている場合もありますが、それでもこれらは経験で判断できます。 


また、「動物繊維」については、燃やした時の燃え方、匂いからタンパク質系と判断し、繊維の直径が不揃いなどの特徴から天然繊維と判断。比較写真と比較して、毛、絹でなければ、キサントプロテイン反応で確証を得た後に、種類は不明であるものの「タンパク質系」と判断することができます。


これらの様に分析は簡単な方が良いと思いますが、その一方で、消費者にとっての「わかりやすさ」の面ではどうでしょうか? 「植物繊維」と「動物繊維」の方がわかりやすいかもしれません。ただ、素材を第3者が判定できないと組成を示す意味がないのではと思います。


 2)研究中の新しい絹


 レーヨンはセルロースを溶かして糸にしています。同様に絹を溶かして、再び糸にする研究が行われていました。その当時、絹は貴重なものであり、レーヨンが商業化できたので、絹でも可能と考えていたと思われます。文献を調べてみると、方法は書いていませんでしたが、新聞記事にその旨が書かれていたのを見たことがあります。その後、実用化はできなかったのでしょう。


絹を溶かす薬品はいくつか知られていますが、糸に再生した時の強度が著しく弱いか、薬品のコストが高く実用化できなかったのでしょう。しかし、今はバイオの時代。遺伝子を取り出し、特定の生物に絹タンパク質を培養させることは可能です。この場合、天然繊維ではないので、動物繊維にあたりません。レーヨンと同様に再生繊維となるはずです。セルロース系では「再生繊維」の他に「精製繊維(JISの指定用語ではない)」があります。「再生繊維」は、セルロースをセルロース誘導体に変質させて溶解させ、糸にします。一方、「精製繊維」は、セルロースのまま溶解させ、糸にしています。そのため、以下の様になると思います。


①絹タンパクの誘導体を経て糸にするもの:【再生繊維(商標)    ●%】

②絹タンパクの誘導体を経ないで糸にするもの:【分類外繊維(商標) ●%】


 


3)熱可塑性セルロース繊維


 セルロースを溶融紡糸(熱で溶かし、糸にする)できる技術が開発されました。(東レ:フォレッセ)これは、どうか考えるべきでしょうか? まず、「植物繊維」は“植物から得る天然繊維の総称(L0204)”なので、「植物繊維」ではありません。次に「再生繊維」は“セルロースやたんぱく質を溶解して再生した繊維(L0204)”と書かれています。となると、製造方法が「再生」か「精製」かが、別れ目になるでしょう。調べてみると、セルロースを誘導体にしており、これで水素結合を少なくし熱可塑性に変えています。となると「再生」と考えることができます。「再生」ではあるけれどレーヨン、ポリノジック、キュプラいずれでもありません。そのため、以下の様になると思います。 


【再生繊維(商標)   ●%】


 


4)プロミックス


プロミックスは牛乳由来のタンパク質から作られています。タンパク質を溶かして作られる繊維も「再生繊維」であるから、「再生繊維」と思いましたが、牛乳由来のタンパク質だけではなく、アクリロニトリルを加えて作られており、タンパク質を再生しているのではありませんので、合成繊維になります。(現在は生産されていないと聞いております。) 


【合成繊維(プロミックス) ●%】   または

【合成繊維(商標)     ●%】


 


他に大豆タンパクから作られたい繊維も聞いたことがありますが、今は見ませんね。


 


5)ソロテックッス


ソロテックス(商品名)は、PTTですが、表示だとポリエステルになってしまいます。


①ソロテックス100%の糸 


【ポリエステル  ●%】


 


②ソロテックスと綿の混紡 


【ポリエステル ●%】

【綿      ●%】


いずれも、PTTがポリエステルと表示されます。ただ、PTTの方がポリエステルよりも耐熱温度が低いので、アイロンの指示は、ポリエステルより低めのほうが望ましい。


 PTTとポリエステルのコンジュゲート糸 


【複合繊維(ポリエステル) ●%】


 このように複合繊維の規定を使い表示すると思いますが、複合と言いながら一種類しか書いていません。むしろ、【複合繊維(ソロテックス) ●%】と商標表示の方がわかりやすいのではないでしょうか?


 6)複合繊維 ポリエステルを芯に綿を紡績した糸


混用率の試験で綿を溶かして、その比率を出せるので、


【綿      ●%】

【ポリエステル ●%】


 でもいいですが、複合繊維の規定を使用すれば、この糸が100%の時は、混用率の試験を行わず、【複合繊維(綿、ポリエステル)100%】と表記ができるのでないでしょうか。


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