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機能性評価試験による「効果あり」とは [05 試験方法・評価]

先日、カケンの研究発表会を聞き、遮熱試験、防蚊試験などの機能性試験について最新の情報を得てきました。


この様な機能性試験での「効果あり」については、二通りの考え方があります。①未加工と加工した試料を評価試験して、その差が一定以上あれば「効果あり」とする。②評価試験の測定値が、一定の条件を満たしていれば「効果あり」とする。
 技術屋の立場から言うと、未加工と加工の差を評価してみたい。加工場所が国内であれば、加工前に未加工分を少し残しておけば、それほど難しいことではない様に思えます。しかし、海外で生産し、加工後の製品を国内で販売するのであれば、未加工の生地は手に入りません。
 さらに、消費者とっては、未加工か加工かは問題でなく、試験の測定値が、一定の条件を満たしていれば「効果あり」と考えた方が理解しやすい。
 時代の要請からか、消費者に「わかりやすく」が主流になっているのだと思います。
  紫外線遮蔽の評価の場合、加工薬剤を入れて加熱します。そのときに生地が収縮し、目が詰まり、その効果で紫外線遮蔽の効果が上昇する。加工薬剤の影響はほとんどなかったというケースも見たことがあります。これは、特殊な事例かもしれませんが、本当に加工の影響か、もともと生地に遮蔽の効果があるのか、この様な事例で「効果あり」とうたっていいものか疑問です。試験としては、未加工の生地でなく、加工薬剤が未使用で他は薬剤と同じ様に熱を加えた試料が必要です。しかし、これをわざわざ作るとなると大変です。
 やはり、加工剤の効果の証明よりも、測定値が、一定の条件を満たしていれば「効果あり」とした方が、消費者にわかりやすくていいのでしょう。 
 これとは別に、消費者へのわかりやすさと判定の精度についてはどうでしょうか?
 これについては、以前書きました。もう少し考えたい問題です。https://sen-i.blog.so-net.ne.jp/archive/c2304872654-1


 


 


 


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毛羽の脱落試験について [05 試験方法・評価]

毛羽の脱落試験について


 パイル生地や起毛(別珍やコール天)やフロック加工を行った生地や、糸では、モール糸、甘撚りの紡績糸などを使用した生地などでは、毛羽の脱落がクレームになることがあります。


 これらの評価方法としては、以下の方法があります。


 1)QTECセロハンテープ法 (QTECの読みは「キューテック」)


概要:セロハンテープを生地につけておもりを乗せる。所定時間後、はがし、テープにどのくらいの毛羽がつくかを比較。


おもりや毛羽付着試験判定用スケールはQTECで販売しています。


  試験方法や基準について、詳しくはここ

https://www.qtec.or.jp/work/20160519_2414.html


 


2)パイル保持率JIS L 1075 C


概要:摩耗試験Ⅱ型(学振型)に生地を置く、摩擦試験の時に使用する白布の代わりに、耐水研磨紙として、摩擦する。摩擦後、生地が削れているので、残った質量を測定し、次式から「パイル保持率」を計算します。


 パイル保持率=[試験後に試験片aを試験片bの大きさに切り取ったもののパイルの残留質量(g)]/[試験片bのバイル質量(g)]×100


 試験片a:比較のための元の生地。切り出し後、試験片bと同じ大きさに切りそろえる


試験片b:実際に試験を行う試料片


 条件(研磨紙が粗すぎるか、回数が多い場合)によっては、パイル以外の基布も紙やすりが削り取ってしまう場合もあります。この場合、正確な意味で、「パイルの保持率」ではなくなるので、条件を変えたほうがいいと思います。


基準値:試験条件 摩擦回数 :500回、耐水研磨紙 :P800CCwで、パイル保持率60%以上


 


3)タオルの洗濯による脱綿率試験方法(TRI 法)


概要:タオル1枚を洗濯し、排水箇所にフィルターを置き、それがとらえた毛羽の量を測定する。


洗濯は、全自動洗濯機を標準コースで使用。フィルターは、150μm メッシュを用いて脱落物(=脱綿量)を回収する。


脱綿率の算出:標準状態における試料質量(g)と脱綿量(g)を秤量し、次式から「洗濯による脱綿率」を算出する。


脱綿率(%)(脱綿量/試料質量)×100


 


4)外観変化


既存の試験機で試験をおこない外観を観察、再現試験の一種とみなします。人でなく、試験機を使用する理由は、摩擦する動作が一定になることです。


生地と摩擦布


試験機としては、以下の試験機が多く使われます。


TO形ピリング試験機(試験布と羽根を摩擦)


http://www.daieikagakuseiki.co.jp/products/product.php?item_no=71&selected_category_no=7


 


ICI形ピリング試験機(試験布と試験布を摩擦)


https://www.ipros.jp/product/detail/243917143/


 


マーチンデール磨耗試験機(試験布と摩擦布を摩擦)


http://www.intec-instruments.co.jp/doc/ar-4.pdf


 


5)指でなぞる


原始的だが、商品を指でなぞり、毛羽が落ちないか確認する。


 


その他、生地と別の生地が擦れて、毛羽が脱落する場合がある。この場合、どちらかの生地、または両方の生地から毛羽が脱落している。毛羽立ちが多そうでも、毛羽が脱落していない生地もある。脱落した毛羽を顕微鏡で観察し、色・素材を観察し、どちらの生地が原因になっているかの確認も必要である。



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引張試験の工夫(湿潤状態での試験など) [05 試験方法・評価]

引張試験の工夫(湿潤状態での試験など)


 ビニール袋に試料を入れた状態で、引張試験をしたことがあります。濡れた状態で試験をしたい場合に、この方法を用いました。


 一方、JISでは、この方法を使っていません。試料を濡らした状態(湿潤状態)で行う引張試験としては、JISL10962010 8.14.1 引張強さ伸び率試験 JIS法 として、A法、B法、C法、D法が存在します。


ストリップ法で、標準状態時(湿潤していない)の試験がA法、湿潤状態時の試験がC法です。


また、グラブ法で、標準状態時(湿潤していない)の試験がB法、湿潤状態時の試験がD法です。


湿潤の方法は、C法、D法、共通で、「試験片を1時間以上水中に沈めておく。水から出し、1分以内に測定」となっています。水としか書いていませんが、時には、蒸留水やイオン交換水を使っています。


このJIS法では、破断時に水が飛び散ることがあり、前述のビニール袋を用いた方法が適していると思います。


JIS法では、試験後、チャックでは金属部分を取り外し、水で洗浄、よく拭いて、油を吹き付けて乾燥させます。試験機の周辺では、キムワイフ等で拭き取ります。これらを怠ると錆びる危険があります。


どうしても、JIS法にこだわりたい場合は、「JISを参考」として、水分をキムワイフなどで拭き取り、水が飛び散るのを抑える方法が現実的かもしれません。


 また、破断時に細かい粉体が飛び出す試料にもこの方法は有効です。例えば、試料がフィルターなどで、細かな物質が吸着されている場合や、試料が伝導性をもち、破断時に細かく割れてしまう場合などです。特に伝導性の細かい試料が飛び散ると、電子機器ではショートが起きる可能性があります。(例:炭素繊維


試験機のそばに掃除機を置いて、試験中から作動させる方法もいいですが、飛び散る物質の大きさによっては、排気からでてしまい、撒き散らしている結果になってしまいます。


 引張試験は、基本的な試験ですが、試料によっては、様々な工夫が必要な試験です。


 


補足:


1)広い意味での「湿潤試験」は、水だけでなく、薄い酸やアルカリ溶液に浸漬を含むこともあります。


2)試料を水に浸漬して引張試験ができる様にするオプションもあります。



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ピリングとその対策 [05 試験方法・評価]

ピリングとは、「生地の表面が摩擦により、繊維がからみあって毛玉ができること」です。できた毛玉のことを「ピル」と言います。冬に着るセーターなどで問題になります。

紡績糸の方が発生しやすく、また、毛ではピリングが発生しても、ピルが落ちることがありますが、合成繊維では糸が強く、ピルが落ちることが少なく、合成繊維の方が見立ちます。


 ピリングを良くするためには、、、、

規格を変えことが可能ならば、

1)毛焼き

紡績糸の場合特に有効、ピルが発生させる最初のきっかけとなる糸から出ている細い繊維を焼いてしまい、ピルを発生しにくくします。

2)組織を変える

浮いた糸を少なくする。凸凹を少なくすることで、摩擦による引っ掛かりが少なくなることで、ピルを発生しにくくします。

規格が変えられないとすると、「抗ピル加工」を後加工することになります。主な方法は以下のとおり


4)樹脂で固める


5)潤滑剤を塗る


6)繊維を弱くする


これは、ピルが発生しても、生地からとれてしまい、ピルが目立ちにくくなります。
合成繊維で特に有効。


7)裏に生地を貼る


ピリングは、生地の中の糸を引っ張りだし、成長していくため、裏に生地を貼ると糸が動着にくくなり、ピリングの成長を阻害します。


白い生地の染色堅ろう度 [05 試験方法・評価]

品質管理のために、堅牢度試験が行われています。
それは、良いことなのですが、白い生地(染めていない生地)でも試験をすることがあります。

例えば、白いレース生地のドライ堅牢度。
結果は、良好です。落ちるべく染料がありませんので。。

白を例外とすることなく堅牢度試験を行うのが一般的なようです。
これでいいのでしょうか? 

白い生地(染めていない生地)に対する堅牢度試験は、耐光試験と水滴下だけで十分だと思います。

・耐光試験は、加工剤や油剤等の残存物が光により変色しないか確認。
 この場合、加工剤等が透明から黄色や茶色の変色が一般的です。
 (照射量が増えると、天然繊維やナイロンでは、生地の素材自身の変色が生じることがあります。
 それよりも少ない照射量で、生地に変色が生じるならば、加工剤などを変えるなどの対応を考えなくてはなりません。)

・水滴下は、加工剤や油剤等の残存物が輪染みにならないか確認。
 
 

タグ: 堅牢度
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