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生地を固くする [03 製造・加工]

生地を固くする

もっと固い風合いがよいとか、大きな繊維製品だと自重で変形してしまう。
このような問題の解決のためには、生地を固くすることが行われている。

生地の設計変更ができるときは
 ・織り密度を大きく
 ・2重織、3重織のように多層化
 ・異素材(より固いもの)を何本かおきに入れる
 ・熱融着糸の利用

*熱溶着糸には、芯鞘タイプ と混紡糸タイプがある。
熱溶着糸は 普通のポリエステル(あえて、言い分けるときは「レギュラーポリエステル」という)と低融点ポリエステル(レギュラーポリエステルよりも低い温度で融ける)からなる。
熱を加えることで、低融点ポリエステルが融け、他の糸にからみ、それが固まることで、熱融着される。
芯鞘タイプでは、芯にレギュラーポリエステル、鞘(外側、芯を包み込む部分)に低融点ポリエステルという構造を持つ。
混紡タイプでは、レギュラーポリエステル、低融点ポリエステルを混紡してあり、糸同士が熱で癒着し固くなる。
温度を変えることで融ける程度が変わり、風合いの調整可能。(ただし、再現性にはノウハウあり)

 
できた生地を改良して使う場合
・ボンディングなどで別の生地や不織布などとの張り合わせ、縫い合わせ
・樹脂加工
 同じ系統のなじみがよいと考え方もあるが、移染を避けるため、生地と異なった素材にする場合もある。
 
樹脂加工の分析は、難しい。繊維に対して微量すぎて、分析器では感知できないことが多い。
実用的な方法として、染料を用いて判断することがある。素材本来の色目と色が違って見えた場合、強くこするとその色が落ちたり、表面のみの変色がある場合は、樹脂加工ありと考えてよい
例えば、繊維鑑別染料カヤスティンQで染色すると、防炎の樹脂は赤みを帯びることが多い。
カヤスティンQ の赤は、カチオン染料であるから、この樹脂はマイナスの電荷をもっていると推測される。

綿の収縮防止について [03 製造・加工]

綿の収縮防止について

 

 綿の生地は洗濯し収縮させるとそれ以上は収縮しなくなることが多いので、生機の段階で収縮させ出荷すれば、生地での収縮は小さくなります。

ただし、この時に幅がむので、必要幅がある時は、その幅よりも大きくしなくてはなりません。それ以上の効果を持つ加工方法=綿の防縮について調べてみました。

 

サンフォライズ加工

織物の防縮加工の一種。布が水で収縮する量を測定しておき,フェルトを張ったローラー上で一定の湿気を与え,フェルトとともに予定量だけあらかじめ収縮させて仕上げる。縮みの原因である綿繊維の不安定な部分を物理的な方法で安定させ、縮みを縦、横ともに1%に留める。

*生地で行う

 

樹脂加工

綿繊維の不安定な部分に樹脂を浸透させて固定し、水を吸収しても繊維が動きにくくして縮みを防ぐ加工。

*生地で行う

 

シルケット加工(マーセライズ加工)

生地を引っ張りながらカセイソーダ液で処理すると繊維の表面がきれいになり、光沢が付く加工。防縮性が出て、染料や薬品の吸収性が良くなり、強度が増し、効果は持続する。

*糸、生地で行う

*シルケット加工済みの糸で生地をつくると、いわゆる「綿らしさ」が少なくなります。顕微鏡でみると綿が特徴的なリボン状の形態でなくなっています。

 

液体アンモニア加工SSP加工

マイナス33.4度で液化したアンモニア液で、綿繊維を化学的に改質させる方法。加工してから縫製し、高温で処理する

*生地で行う

 

VP加工Vaper Phase加工

縫製後にホルマリンガスを噴きつけて繊維内に浸透させ、形状を安定させる。

*縫製品で行う

 

●の加工2つは、生地-縫製を一貫して行うことがほとんどで、綿の生地の収縮が悪い時の改善方法としては使いにくい。


繊維と酵素の利用 [03 製造・加工]

繊維と酵素の利用に関して、素材ごとにまとめてみました。

 

1)綿

①風合い加工【素材:綿、成分:セルロース、酵素:セルラーゼ】

綿(セルロース)への酵素処理(例:セルラーゼ)は、不均一な減量、フィブリル繊維の切断、強伸度の低下、水分率の低下を及ぼす。

機械的な作用とともに行うと毛羽除去、適度な減量が生じ、揉み・たたき効果によって構造組織の変化がおこり、糸や生地表面のなめらかさや光沢性の向上、ピリング性の向上、柔軟性の付与、吸水性の改善がされるこれを「バイオポリッシング加工」と呼欠点は、強伸度の低下。

素材としては、水分率が低下するが、生地としては、吸水性が向上する。

 

②綿の精練【素材:綿、成分:不純物としての①ペクチン質、②綿ろう、酵素:①ペクチナーゼ、②リパーゼ】

 綿の精練では、ペクチン質や綿ロウ(天然の油分)の除去を行う。そのために強アルカリ(水酸化ナトリウムなど)でペクチン質を可溶化、綿ロウはケン化することで可溶化する。一般に、浸透力を強化するため界面活性剤を併用して高温で行う。

 酵素精練(バイオ精練)は、ペクチナーゼを用いペクチン質を除去、リパーゼを用い綿ロウを除去する。廃アルカリの処理が不要なため、環境負荷が少なくなる。

 

2)麻

①綿と同様に精練及び風合い加工のために各物質に対して酵素を用いる。

 セルロース:セルラーゼ

 ヘミセルロー:ヘミセルラーゼ

 リグニン:リグニン分解酵素

 

ヘミセルロースhemicellulose】:植物細胞壁に含まれる、セルロースを除く水に対して不溶性の多糖類の総称。Wikiより

リグニン【lignin】木質素とも呼ばれる高分子物質。高等植物中でセルロースなどとともに植物の木化に関与する。木材中の20~30%を占め,セルロースと結合した状態で存在する。世界大百科事典 第2版より)

 

3)絹

絹の精練【素材:絹、成分:セリシン、酵素:プロテアーゼ】

 絹の精練は、石鹸を主体に珪酸ソーダ、炭酸ソーダ、重曹等のアルカリが使われる。

酵素精練では、プロテアーゼを用い、セリシンのみを分解する。

 この性質を利用して、「セリシンオパール」という加工がある。未精練の絹に対し、オパールと同じ手段を用い、部分的にセリシンだけを分解させ、光沢が異なる部分を作る。

 

4)ポリエステル(吸水改善)

 ポリエステル酵素加工が研究されている。強度劣化を抑え、表面に小さな凸凹を作り、吸水性が向上させる

 

5)その他(サイジング除去)

 サイジングされた経糸が澱粉の場合は、アミラーゼを用いて分解する。

 

6)その他(漂白の中和)

 染色前工程の漂白では、繊維の脆化が少ない過酸化水素を用いる。しかし、わずかでも残存していると染色工程へ悪影響をおよぼす。そのため、中和として亜硫酸ソーダ、チオ硫酸ソーダなどの還元剤使用する。

 酵素処理としては、還元剤を用いず、カタラーゼを用い、過酸化水素を水と酸素に分解する。この方法では、還元剤自身の残留の心配がない。

 


編物(たて編)の天と地 [03 製造・加工]

編物(たて編)の天と地 

編地に天と地が書かれていることがある。
その意味は、
 編み始めの方が、「地」(読みは:「てん」)
 編み終わり方が、「天」(読みは:「ち」)
である。

「天」と「地」を指示して支持しておく目的は、タテ方向の引き裂きに対して、
「天」から引き裂いた場合、「地」から引き裂いた場合で、強い・弱いがあるからである。
具体的には、「天」から引き裂いたときが弱い。

JISに則り、編地の引裂試験を行う場合、試料を短冊型に切り出し、切れ目を入れる。
このときに タテ方向は「天」から切れ目を入れ行う。(*1)

このように、編地の引裂試験は、引き裂く方向に注意しなければならない。

同じサンプルでも、「天」から引き裂いた場合と「地」から引き裂いた場合で、結果が異なることが多い。そのため、常に「天」と「地」を意識することが必要である。

*注1 もう少し詳しく
JIS L 1096 の表現だと『編物でウェール方向のときは試験片のニードルループが下になるよう図 13のように挟む』という表現になっている。
(ここで、図を引用することができなので、実際の図を参照してほしい)

余談:天と地という理由は、あとで作られた方が「天」となり、上にあるからであろうか?

 

ver.2     2013/05/03 

 

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