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「Dr.STONE」での織機について [06 技術論]

 Dr.STONE」という漫画をご存知でしょうか? ネタバレになるから、詳しいことはかけませんが、一度、文明がなくなり、主人公たちが工夫して再度、文明品を作り上げていきます。この漫画でとりあげられたのは「織機」。

 まず、経糸を一定間隔で並べて、1本おきにすくって緯糸を通す。この作業の省力化のために、「筬綜絖」を作ります。この「筬綜絖」は筬(経糸を一定間隔に並べる)と綜絖(糸を通し、開口装置をつながる部分){この開口方法に、ドビーとかジャガードがあります}の両方の役目をします。現代の織機では、筬と綜絖は別のものですが、今でも一部の簡易手機では、筬綜絖を使っています。(手機の解説書によって、「筬」と言ったり、「綜絖」と言ったりしていますが、正しくは、「筬綜絖」というべきもの)

(余談:また、タテ編みでも、「筬」と言っていますが、「筬」を動かして、柄を作っていますので、「綜絖」としての役目を担っています)

 次に「織機」を作り出します。ここで織機の「デザイン」を今の技術系列につながる実存した織機を書くのか、天才が思いついた別の技術系列の織機とするのか、作者の手腕が問われます。前者は無難ですが、後者の方が漫画家としてのチャレンジです。さて、どんなデザインでしょうか?

:::::::::::::::画像参照:::::::::::::::drstone_loom.jpg Dr.STONE』(ドクターストーン)原作:稲垣理一郎、作画:Boichi(集英社) 87話より「研究目的のための引用」

 


  さて、このデザインからいろいろ考えてみます。真ん中に見えるのが経糸。手前側が織るところで、座ってペダルを踏むのでしょう。中心から垂直方向に伸びているのは経糸の制御装置でしょうか? 後ろにビーム(経糸を巻いた円柱状のもの)が見れます。

 特徴としては、

①織り幅が極端に変わっている。

②緯糸を入れる機構が確認されない

 作者はチャレンジしています。既存の手機と異なったデザインにしています。現状の技術系列とは別のものですね。

 手前の織るところで、糸が並んでいる部分の幅が半分ぐらいになっています。となると、中心と端の糸の長さが違う。後方にある(と思われる)糸を巻いたビームでは同じ長さなので、中心部の糸が余ってくる。これだと「織 れ」ないでしょう。さらに、緯糸を入れる機構がないのだから、織機でないことを考えてみましょう。

 ストーリィとしては、多量の布が必要。この布は手編みでつくられる編地よりも密度のあるものが欲しい。となると「織機」にこだわる必要はないし、きれいな柄を織り上げる必要もない。つまり、短時間で糸から布にする機構(「織り」以外に「編み」や「組み」)を考えてみます。

 後ろのビームは1本でなく、複数のビームが並んでいると仮定。タテに長い部分で、後ろの糸の一部を鎖編みにしていく。さらに、別の部分の糸をその鎖編みの間を左右に通していく。このことで「面」を作っていく。(タテ編みと同じ)これらを前に移動させる時に幅を縮めて、密度を高くしていくという機構はと見るのはどうでしょうか?(実際にできるかは別として)

 さて、私ならどう考えるか?

 今回は○○のために(ネタバレ防止の為、書けない)、薄くて(目付けが軽く)空気の通りが極めて悪い(=通気性の低い)布が必要。それならば、「編み物」で補強した「不織布」を提案してみたい。

仮定条件は以下の通り

①:糸は、植物繊維から作る技術が確立されている

②:羊が家畜化され、ウールを刈り取る技術は確立されている

③:石鹸を作る技術が確立されている

 この世界にある糸で編み物を作る。このとき密度は甘くてよい。それを広げ、ウールを広げ、石鹸水を注ぎ、揉むことでウールをフェルト化させる。このことで、薄いフェルトを作成さる。中に編物があることで、薄いわりには強度があり、通気性が少ない布が作れる。古く遊牧民は、ウールからフェルトを作っていましたが、彼らは保温のために厚いものを作ってきた。薄いものを作ろうとはしていない。フェルトだけで薄いものを作ろうとすると弱くなってしまう。薄いまま強度を出すには、不織布の中に編物を入れておく。こう考えると複合材料ですね。

 


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