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毛羽の脱落試験について [05 試験方法・評価]

毛羽の脱落試験について


 パイル生地や起毛(別珍やコール天)やフロック加工を行った生地や、糸では、モール糸、甘撚りの紡績糸などを使用した生地などでは、毛羽の脱落がクレームになることがあります。


 これらの評価方法としては、以下の方法があります。


 1)QTECセロハンテープ法 (QTECの読みは「キューテック」)


概要:セロハンテープを生地につけておもりを乗せる。所定時間後、はがし、テープにどのくらいの毛羽がつくかを比較。


おもりや毛羽付着試験判定用スケールはQTECで販売しています。


  試験方法や基準について、詳しくはここ

https://www.qtec.or.jp/work/20160519_2414.html


 


2)パイル保持率JIS L 1075 C


概要:摩耗試験Ⅱ型(学振型)に生地を置く、摩擦試験の時に使用する白布の代わりに、耐水研磨紙として、摩擦する。摩擦後、生地が削れているので、残った質量を測定し、次式から「パイル保持率」を計算します。


 パイル保持率=[試験後に試験片aを試験片bの大きさに切り取ったもののパイルの残留質量(g)]/[試験片bのバイル質量(g)]×100


 試験片a:比較のための元の生地。切り出し後、試験片bと同じ大きさに切りそろえる


試験片b:実際に試験を行う試料片


 条件(研磨紙が粗すぎるか、回数が多い場合)によっては、パイル以外の基布も紙やすりが削り取ってしまう場合もあります。この場合、正確な意味で、「パイルの保持率」ではなくなるので、条件を変えたほうがいいと思います。


基準値:試験条件 摩擦回数 :500回、耐水研磨紙 :P800CCwで、パイル保持率60%以上


 


3)タオルの洗濯による脱綿率試験方法(TRI 法)


概要:タオル1枚を洗濯し、排水箇所にフィルターを置き、それがとらえた毛羽の量を測定する。


洗濯は、全自動洗濯機を標準コースで使用。フィルターは、150μm メッシュを用いて脱落物(=脱綿量)を回収する。


脱綿率の算出:標準状態における試料質量(g)と脱綿量(g)を秤量し、次式から「洗濯による脱綿率」を算出する。


脱綿率(%)(脱綿量/試料質量)×100


 


4)外観変化


既存の試験機で試験をおこない外観を観察、再現試験の一種とみなします。人でなく、試験機を使用する理由は、摩擦する動作が一定になることです。


生地と摩擦布


試験機としては、以下の試験機が多く使われます。


TO形ピリング試験機(試験布と羽根を摩擦)


http://www.daieikagakuseiki.co.jp/products/product.php?item_no=71&selected_category_no=7


 


ICI形ピリング試験機(試験布と試験布を摩擦)


https://www.ipros.jp/product/detail/243917143/


 


マーチンデール磨耗試験機(試験布と摩擦布を摩擦)


http://www.intec-instruments.co.jp/doc/ar-4.pdf


 


5)指でなぞる


原始的だが、商品を指でなぞり、毛羽が落ちないか確認する。


 


その他、生地と別の生地が擦れて、毛羽が脱落する場合がある。この場合、どちらかの生地、または両方の生地から毛羽が脱落している。毛羽立ちが多そうでも、毛羽が脱落していない生地もある。脱落した毛羽を顕微鏡で観察し、色・素材を観察し、どちらの生地が原因になっているかの確認も必要である。



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リング糸と空紡糸 [02 素材]

先日、「空紡糸」を見ました。日本ではあまり、みかけません。いつもなら、紡績糸を解いて、繊維そのものを光学顕微鏡で観察し、素材を判別します。今回は、糸をそのまま、実体顕微鏡で観察したので、気が付きました。ひょっとすると、今までは気が付かなかっただけかもしれません。空紡糸の方が新しく開発され、生産コストが安いのですが、細番手が作れないので、リング糸と共存です。また、Tシャツやジーンズの世界では、風合いが異なるため、使い分けられているそうです。

オープンエンド紡績糸:スライバー(繊維の束)の繊維を一度ばらばらにして、高速で回転するローターの中で、その遠心力で繊維をローラーに内側に並べ、ローターの回転で撚りをかけてつくった糸[繊維素材辞典/一見輝彦]

両者の違い

 

【リング糸】

 

【空紡糸】

オープンエンド紡績糸とも

糸の状態

糸の繊維が均一で、糸全体に均一の撚りがかかっている

糸の繊維が不均一で糸の外側に強い撚りがかかっているが、内側には撚りがかかってない

糸の形状

糸に締まりがある

糸に膨らみ(デコボコ)がある

→ゴアゴア感、ドライ感

生産コスト

高い

こちらが古く、コストを安くするための方法の一つがオープンエンド紡績糸

安い

最近は、コストよりも風合いの差別化

 

生産される番手

太番手から細番手まであり

 

太番手のみ(一般には10番から20番が主流、40番程度まで)

最近は改良されており60番も可能

強力

強い

リング糸に比べると弱い

好み

日本で好まれる

アメリカで好まれる

 


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