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洗濯タグについて マフラーにも洗濯タグを必ずつけるようになるのか? [07 販売・小売]

洗濯タグについて マフラーにも洗濯タグを必ずつけるようになるのか?

 繊維製品には、洗濯方法を示すタグがついていますが、これは、家庭用品品質表示法に基づいています。

洗濯表示に限らず、以下の4つが表示されます。①繊維の組成(いわゆる混用率、どんな素材が何%か)、②家庭洗濯等取扱い方法(いわゆる洗濯タグ)、③はっ水性、④表示者名及び連絡先 

この4つで、①④は、必ずつけることになっています。②③は、繊維製品の種類ごとに決められています。②は大半の繊維製品につけなくてはいけませんが、つける必要のない繊維製品もあります。例えば、上衣、ズボン、スカートなどにはつける必要がありますが、ハンカチ、マフラー、靴下などにはつける必要はありません。ただ、習慣として、後者にも、消費者に洗濯方法を指示するために、タグやシールなので、つけている場合があります。(③はレインコートなど一部のものだけにつける必要あり)

なお、マフラー、帽子について、消費者のトラブルが多く、これらにも洗濯タグを付ける様に改正される見込みです。ただ、使っている方の中には、切っちゃう人、いるんですよねぇ。

参考HP(新聞記事):http://www.asahi.com/articles/ASJC84T0NJC8UTFL00C.html



 また、繊維製品ごとに①②③④のどれをつける必要があるかの一覧表は下記(消費者庁のHP

 http://www.caa.go.jp/hinpyo/guide/fiber_top.html

 

さらに、洗濯タグのつけ方も詳しく決められています

 以下、家庭用品品質表示法 洗濯表示 記号表示 より抜粋

(1)記号の適用

・ 記号は、直接製品に記載するか、又はラベル(縫い付けラベルなど)に記載する。

・ ラベルは、少なくともラベルを付ける繊維製品と同程度の家庭洗濯処理及び商業クリーニング処理に耐え得る適切な素材で作成する。

・ ラベル並びにラベルに印字した記号及び付記用語は、容易に読み取れる大きさとし、製品の耐用期間中は判読可能でなければならない。

・ ラベルは、消費者が簡単に分かる箇所に見やすく、縫い目などに隠れず、かつ、しっかりと容易に取れない方法で繊維製品に取り付けなければならない。









ピリングとその対策 [05 試験方法・評価]

ピリングとは、「生地の表面が摩擦により、繊維がからみあって毛玉ができること」です。できた毛玉のことを「ピル」と言います。冬に着るセーターなどで問題になります。

紡績糸の方が発生しやすく、また、毛ではピリングが発生しても、ピルが落ちることがありますが、合成繊維では糸が強く、ピルが落ちることが少なく、合成繊維の方が見立ちます。


 ピリングを良くするためには、、、、

規格を変えことが可能ならば、

1)毛焼き

紡績糸の場合特に有効、ピルが発生させる最初のきっかけとなる糸から出ている細い繊維を焼いてしまい、ピルを発生しにくくします。

2)組織を変える

浮いた糸を少なくする。凸凹を少なくすることで、摩擦による引っ掛かりが少なくなることで、ピルを発生しにくくします。

規格が変えられないとすると、「抗ピル加工」を後加工することになります。主な方法は以下のとおり


4)樹脂で固める


5)潤滑剤を塗る


6)繊維を弱くする


これは、ピルが発生しても、生地からとれてしまい、ピルが目立ちにくくなります。
合成繊維で特に有効。


7)裏に生地を貼る


ピリングは、生地の中の糸を引っ張りだし、成長していくため、裏に生地を貼ると糸が動着にくくなり、ピリングの成長を阻害します。


Tシャツの前処理剤でかぶれ  昨日のニュースから [04 クレーム対応]

スポーツ大会で配られたTシャツで皮膚にかぶれ 「前処理剤」に原因

引用元:http://news.livedoor.com/article/detail/12009960/

 被害者の数が約30人 配ったTシャツは363名 クレーム発生率は、約10% これは、製品そのものに問題があり、個人の使い方などが原因ではない数字です。

 ニュースを読んだ限りわかることは、

Tシャツに顔料プリント

発色の良くなる前処理剤を使用

昼間、海の近くで使用され問題発生

 原因究明が急務ですが、安易な「前処理剤狩り」にならないよう注意が必要です。

 引用したニューズの中にも「製品の安全を検査するNITEによると、前処理剤は有害性があり、Tシャツに大量に残っていた可能性があると指摘する。とありましたが、すべての前処理剤が有害ではありません。適切な使用方法(一定以下の濃度とする、プリント後に洗い流す、温度をあげるなどして薬品を完全に反応させる)であれば問題はありません。

 通常、薬品が市場に出るときは安全性が確かめれれているので、今回の問題は、①使用方法の間違いか②薬剤との複合要因が考えられます。

 前者では、

 使用濃度が濃すぎる

 プリント後、熱をかけるべきところでかけなかった

 (完全に反応すれは、水に溶けず、皮膚に触れず、問題を起こさないケースを想定)

などが考えられます。

 後者では、前処理剤だけではなく、この薬品+(光、海水、汗)などの複合作用が考えられます。

 いずれにしろ、原因究明と被害者救済が急務です。

 情報が入り次第書き足す予定  2016.09.17


生地を固くする [03 製造・加工]

生地を固くする

もっと固い風合いがよいとか、大きな繊維製品だと自重で変形してしまう。
このような問題の解決のためには、生地を固くすることが行われている。

生地の設計変更ができるときは
 ・織り密度を大きく
 ・2重織、3重織のように多層化
 ・異素材(より固いもの)を何本かおきに入れる
 ・熱融着糸の利用

*熱溶着糸には、芯鞘タイプ と混紡糸タイプがある。
熱溶着糸は 普通のポリエステル(あえて、言い分けるときは「レギュラーポリエステル」という)と低融点ポリエステル(レギュラーポリエステルよりも低い温度で融ける)からなる。
熱を加えることで、低融点ポリエステルが融け、他の糸にからみ、それが固まることで、熱融着される。
芯鞘タイプでは、芯にレギュラーポリエステル、鞘(外側、芯を包み込む部分)に低融点ポリエステルという構造を持つ。
混紡タイプでは、レギュラーポリエステル、低融点ポリエステルを混紡してあり、糸同士が熱で癒着し固くなる。
温度を変えることで融ける程度が変わり、風合いの調整可能。(ただし、再現性にはノウハウあり)

 
できた生地を改良して使う場合
・ボンディングなどで別の生地や不織布などとの張り合わせ、縫い合わせ
・樹脂加工
 同じ系統のなじみがよいと考え方もあるが、移染を避けるため、生地と異なった素材にする場合もある。
 
樹脂加工の分析は、難しい。繊維に対して微量すぎて、分析器では感知できないことが多い。
実用的な方法として、染料を用いて判断することがある。素材本来の色目と色が違って見えた場合、強くこするとその色が落ちたり、表面のみの変色がある場合は、樹脂加工ありと考えてよい
例えば、繊維鑑別染料カヤスティンQで染色すると、防炎の樹脂は赤みを帯びることが多い。
カヤスティンQ の赤は、カチオン染料であるから、この樹脂はマイナスの電荷をもっていると推測される。

ディスプレイにストーリーを [07 販売・小売]

 最近、出張のついでに、小売店を見て回った。いずれも、こだわりの商品を扱っている店。

一つは
「2k540 AKI-OKA ARTISAN」 (御徒町と秋葉原の間の高架下にある)
 
繊維関連は、
「日乃本帆布」(帆布バックなどを扱う)
「染こうば にじゆら」(注染てぬぐいなどを扱う)
 など

もう一つは、「ヤマナシハタオリトラベル」 (山梨県富士吉田市 富士山の近く)

 いずれも、ディスプレイに凝っており、生産現場で使う「管」、「鋳物の歯車」、などが効果的にディスプレイされていた。今までの店では、商品を展示していたが、生産現場で使うものをディスプレイすることで、ストーリー性が生まれている。
 生産現場で使っているものを本物を展示していることは、「日乃本帆布」に飾られた「管」は、帆布を織るための綿糸が巻かれていたし、「ヤマナシハタオリトラベル」に飾られた「管」は、絹織物を織るための先染め絹糸が巻かれていたことでもわかる。

 また、前者の「2k540 AKI-OKA ARTISAN」では、全体の傾向として、ワークショップやオーダーメード対応の店が多い。また、「染こうば にじゆら」では注染では染める機械があったので、生産現場を見ることができると思う。

 これらは、これからのモノ作りの販売形態だと思う。ただし、前者は、東京。後者は、産地の近くに富士山という観光地があり、いずれも人の集まる利点がある。産地が必ずしも観光地ではない。逆に産地で、販売を中心にワークショップ等の体験、生産現場の見学を含めて観光地化する動きが始まっている。

*「管」:【くだ】よこ糸をシャトルに収容しやすい形に巻いたもの。JIS L0210
シャトルの中に入っている、糸の巻かれた円筒状のものである。ほとんどが、木製。

*歯車:力織機は、緯糸をうった後、一定間隔で、生地を巻き取る構造になっている。この巻き取り量を決めるのに複数の歯車を使っている。歯車の組み合わせで、打ち込み本数(緯糸密度ともいう)が決まる。歯車の組み合わせと打ち込み本数の対応表があり、織機のそばに貼ってあることが多い。

・手機では、この機構はなく、ある程度、緯糸を打った後、生地を巻き取る。
・力織機:動力をもつ織機。手機に対して使う用語。


生地の裏表を見分ける方法 [06 技術論]

生地の裏表を見分ける方法
経験的になんとなく裏表を決めてしまいがちですが、文章にすると次の様になります

・文字、マーク、ロゴ、商標などが正しく見える面
 プリントでも、組織で柄を出す場合も共通

・プリント生地の場合
 プリントが鮮明な面が表
 何色かプリントする場合、耳に使用する色の一覧を丸とか線で印刷することがあります。この場合は、それが印刷されている方が表

・加工されている場合
 平滑な面、艶がある、毛並みが揃っている面
 加工が裏・表同じ効果にならない場合は、綺麗に仕上がっている方が表

・織組織
 *裏表のない組織もあります
 裏と表の組織の見え方が異なる場合、はっきりした組織の面が表
 凸凹を強調した組織では、凸凹がある方が表

・綾組織では綾線が右上がりに見える面が表
 これは日本の文化によるので、海外ものでは通用しません
 また、杉綾、昼夜組織など、綾線を左右バランスよく配置する場合も適応できません

・全幅の生地で、耳があり、テンターの跡が残っている場合
 生地の耳に針を引っ掛けて、幅を一定にするように加工されると、耳に穴があきます。この場合、凸になっている方が表

・ハンガー生地の場合は、会社名が読める方が表
 *両方とも表を見せる作り方もあります

・ロール状に生地が巻かれている場合
 一般則はありませんが、表を内側に巻くか、裏を内側に巻く会社があり、ほとんどの場合、会社ごとに統一されています。これを会社ごとに覚えておくとよい。
それぞれ利点があり、
表が内側:汚れるのを防止
表が外側:ビニールなどで包まれても柄が確認しやすい 

*生地の生産時の裏と表についてはここ↓

このブログの記録 [01 このブログについて]

このブログの記録

2013年2月より開始

2014年5月 タグの設定しなおし、NOTEとの連携 


綿の収縮防止について [03 製造・加工]

綿の収縮防止について

 

 綿の生地は洗濯し収縮させるとそれ以上は収縮しなくなることが多いので、生機の段階で収縮させ出荷すれば、生地での収縮は小さくなります。

ただし、この時に幅がむので、必要幅がある時は、その幅よりも大きくしなくてはなりません。それ以上の効果を持つ加工方法=綿の防縮について調べてみました。

 

サンフォライズ加工

織物の防縮加工の一種。布が水で収縮する量を測定しておき,フェルトを張ったローラー上で一定の湿気を与え,フェルトとともに予定量だけあらかじめ収縮させて仕上げる。縮みの原因である綿繊維の不安定な部分を物理的な方法で安定させ、縮みを縦、横ともに1%に留める。

*生地で行う

 

樹脂加工

綿繊維の不安定な部分に樹脂を浸透させて固定し、水を吸収しても繊維が動きにくくして縮みを防ぐ加工。

*生地で行う

 

シルケット加工(マーセライズ加工)

生地を引っ張りながらカセイソーダ液で処理すると繊維の表面がきれいになり、光沢が付く加工。防縮性が出て、染料や薬品の吸収性が良くなり、強度が増し、効果は持続する。

*糸、生地で行う

*シルケット加工済みの糸で生地をつくると、いわゆる「綿らしさ」が少なくなります。顕微鏡でみると綿が特徴的なリボン状の形態でなくなっています。

 

液体アンモニア加工SSP加工

マイナス33.4度で液化したアンモニア液で、綿繊維を化学的に改質させる方法。加工してから縫製し、高温で処理する

*生地で行う

 

VP加工Vaper Phase加工

縫製後にホルマリンガスを噴きつけて繊維内に浸透させ、形状を安定させる。

*縫製品で行う

 

●の加工2つは、生地-縫製を一貫して行うことがほとんどで、綿の生地の収縮が悪い時の改善方法としては使いにくい。


繊維と酵素の利用 [03 製造・加工]

繊維と酵素の利用に関して、素材ごとにまとめてみました。

 

1)綿

①風合い加工【素材:綿、成分:セルロース、酵素:セルラーゼ】

綿(セルロース)への酵素処理(例:セルラーゼ)は、不均一な減量、フィブリル繊維の切断、強伸度の低下、水分率の低下を及ぼす。

機械的な作用とともに行うと毛羽除去、適度な減量が生じ、揉み・たたき効果によって構造組織の変化がおこり、糸や生地表面のなめらかさや光沢性の向上、ピリング性の向上、柔軟性の付与、吸水性の改善がされるこれを「バイオポリッシング加工」と呼欠点は、強伸度の低下。

素材としては、水分率が低下するが、生地としては、吸水性が向上する。

 

②綿の精練【素材:綿、成分:不純物としての①ペクチン質、②綿ろう、酵素:①ペクチナーゼ、②リパーゼ】

 綿の精練では、ペクチン質や綿ロウ(天然の油分)の除去を行う。そのために強アルカリ(水酸化ナトリウムなど)でペクチン質を可溶化、綿ロウはケン化することで可溶化する。一般に、浸透力を強化するため界面活性剤を併用して高温で行う。

 酵素精練(バイオ精練)は、ペクチナーゼを用いペクチン質を除去、リパーゼを用い綿ロウを除去する。廃アルカリの処理が不要なため、環境負荷が少なくなる。

 

2)麻

①綿と同様に精練及び風合い加工のために各物質に対して酵素を用いる。

 セルロース:セルラーゼ

 ヘミセルロー:ヘミセルラーゼ

 リグニン:リグニン分解酵素

 

ヘミセルロースhemicellulose】:植物細胞壁に含まれる、セルロースを除く水に対して不溶性の多糖類の総称。Wikiより

リグニン【lignin】木質素とも呼ばれる高分子物質。高等植物中でセルロースなどとともに植物の木化に関与する。木材中の20~30%を占め,セルロースと結合した状態で存在する。世界大百科事典 第2版より)

 

3)絹

絹の精練【素材:絹、成分:セリシン、酵素:プロテアーゼ】

 絹の精練は、石鹸を主体に珪酸ソーダ、炭酸ソーダ、重曹等のアルカリが使われる。

酵素精練では、プロテアーゼを用い、セリシンのみを分解する。

 この性質を利用して、「セリシンオパール」という加工がある。未精練の絹に対し、オパールと同じ手段を用い、部分的にセリシンだけを分解させ、光沢が異なる部分を作る。

 

4)ポリエステル(吸水改善)

 ポリエステル酵素加工が研究されている。強度劣化を抑え、表面に小さな凸凹を作り、吸水性が向上させる

 

5)その他(サイジング除去)

 サイジングされた経糸が澱粉の場合は、アミラーゼを用いて分解する。

 

6)その他(漂白の中和)

 染色前工程の漂白では、繊維の脆化が少ない過酸化水素を用いる。しかし、わずかでも残存していると染色工程へ悪影響をおよぼす。そのため、中和として亜硫酸ソーダ、チオ硫酸ソーダなどの還元剤使用する。

 酵素処理としては、還元剤を用いず、カタラーゼを用い、過酸化水素を水と酸素に分解する。この方法では、還元剤自身の残留の心配がない。

 


言ってはならない単語 [06 技術論]

なんのテレビか忘れたが、ホテルのコンシェルが、お客さんに言ってはならない単語は次の3つだと言っていた。

 「無理です」
 
 「ダメです」
 
 「できません」

これらの単語を技術屋として、できるだけ言わないようにしています。

もっと、直接的には、堀晃(ほり あきらSF作家)のエッセイの中ので、中小企業の製品開発担当のセリフに
「開発費用があればできるのですが、残念です。」
とあったのを記憶している。
たしか、堀の前職は繊維関連の技術屋だったような、、
  

補足:堀晃著 「マッドサイエンス入門」新潮文庫 より

開発担当者 ……と、思いつきだと思われるかもしれませんが、このアイディアを企業化すれば黒字転化間違いなしです。

経営者 うーん、しかし今の我が社では資金が不足しておるのう。

開発担当者 残念ですなあ。

構造不況業種の開発担当なんて大体こういうものだと思って間違いない。


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